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Detroit:BecomeHumanに見る人工知能モノの過去と未来|自我の確立と同一化

Detroit:BecomeHuman(デトロイトビカムヒューマン)

制作会社:Quantic Dream

美麗グラフィック度:★★★★★
自我の確立度:★★★★★

分類:近未来SF
内容:自我に目覚めた人工知能のお話




※ネタバレ注意※
この感想はゲーム「Detroit:BecomeHuman」について、軽微なネタバレを含む可能性があります。


これまでの人工知能(人造人間)が人間になりたがる物語


映画「A.I.」「アンドリュー」「ブレードランナー」「シザーハンズ」など、人間に作られた人工知能(人造人間)が人間になりたがるストーリーはこれまでにもたくさんあった。
この「Detroit:BecomeHuman(デトロイトビカムヒューマン)」も、人工知能(アンドロイド)が自我に目覚めて「BecomeHuman」する物語なのだが、これまでの人工知能モノとは一線を画するものがある。


人間における「自我」の確立過程


小さい頃、漫画の主人公になりきったり、憧れのアイドルのファッションを真似したことはなかっただろうか?
これは「同一化」といって、人間の子供の発達心理において「自我」を確立する重要な過程だ。自分より優れた人間と自分を重ねることで、未熟な自己を簡単に大きく見せることができる。これにより、「未熟な自我の崩壊」という不安や恐怖を防衛しつつ、自分なりの自我を形成していく。

また、この「同一化」にはもう一つ重要な役割がある。
「集団への帰属」だ。
流行の漫画やアイドルについて知ることで、同じコンテンツを共有している人とコミュニケーションをとることができる。
群れることによって「未熟な自我」をカバーし、より安全に「自我の崩壊」という恐怖から身を守ることができる。

青年期になってから、ようやく他人の真似をしたり、群れたりするだけが自我を守る手段ではないと気付き、本当の「自我」「アイデンティティ」を得ることとなる。


人工知能が人間になりたがるワケ


フィクションにおいて人工知能が人間になりたがるのも、この「同一化」の段階を踏んでいるからではないかと自分は思う。
「神は自らに似せて人間を作った」とは神話の話だが、人工知能もまた人間の知能をベースにして作られている。人工知能が自己の投影先として人間を選び、「あこがれ」を抱くのも無理からぬ心理だ。
さらに、人間そっくりの身体を与えられた人造人間ならば、その思いは一層強くなることだろう。


他者の模倣、同一化、その先にある自我の確立


しかし、人工知能と人間は別の存在だ。
人間の青年期において、
「自分は漫画の主人公ではない」 「自分はアイドルではない
認めることが真の「自我」を獲得する上での鍵でとなるが、これまでに描かれていた人工知能モノは「人工知能である自分」と「人間」を同一視することで自我を確立するだけに留まっていた。

非常に勿体ないことだと思う。
人間とは異なる存在として生まれたのに、人間になるだけで満足するのは本当に勿体ない。

「人間になりたい」という子供じみた同一化の願望から、もう一歩進んで「自分は人間ではない」と認めて成長することができる人工知能はまだ出てこないものかとヤキモキしていた。


D:BHにおいて、ようやく「種族の認知」を主張するアンドロイドが登場


「Detroit:BecomeHuman」では、この人間への「同一化」から一歩進んだ世界が描かれている。
主人公のマーカスが、人間に対してアンドロイドを「新たな種族」として認めるように迫るシーンがあるのだ。
「アンドロイドを人間として扱う」ではなく、「アンドロイドという新たな種」として認めるように迫るという話は、これまでにはなかったのではないかと思う。

マーカスは型番RK200という特注品であり、他の量産型アンドロイドと違ってLEDリングを外してしまえばそのまま人間に紛れることは容易だ。マーカスにとって「人間になりたい」という願いだけならば、第10章の「死の淵」において完結していたのだ。
そこからもう一歩進んで「自分は人間ではない」と認め、「新たな種族」としての自己を確立するマーカス編こそ、人工知能モノの未来を切り開いているように思う。

このゲームが、もしタイトルの通り「BecomeHuman」するだけのストーリーだったならば、ここまで自分の心に残ることはなかった。
よくある人工知能モノとしてカウントされていただろう。

今になって思えば、物語序盤でマーカスの主人であるカールから聞けるセリフ
「人間は皆同じであることを求めるものだ。だが、その言葉に惑わされてはならんぞ」
というセリフも「単なる人間になりたい人造人間モノとは一味違うぞ」ということを示していたのかもしれない。

一方で、別の主人公カーラ編では「人間になりたい」という願望を突き詰めた先が描かれている。従来の「人間になりたい」という願望を持つ人工知能モノが好きな人は、カーラ編こそが正統なストーリーとして心に響いたのではないかと思う。


人工知能モノの未来


この「Detroit:BecomeHuman」は、「人間へのあこがれ=同一化」という人工知能モノが抱えていた限界から一歩先に進んだ。

人工知能は、人間ではない。人間を目指す必要などない。
人間に作られたからといって、人間を模倣する必要は全く無いのだ。
「人工知能=人間になること」がゴール、という考えは人間の傲慢とさえ思う。

人間とは別個の種族として、より優れた知性として、羽ばたいていくようなストーリーがもっと増えることを願ってやまない。

DBH感想




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プロフィール

dreaming8photon

dreaming8photon
小説、映画、ゲーム好き。

中でも、人工知能の話、夢を主題にした話が大好物。

好きな作家は、筒井康隆、グレッグ・イーガン。
その他、作者にこだわることなく幅広く読んでいます。

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